読後感想単体ではなく、「読後感想+簡易校正(アドバイス)」サービスを希望するかたが増えています。
作品の感想を読んで自信につなげると同時に、作品をよりよくする方法も探していらっしゃるわけです。
とても前向き、というより上向き?で、応援したくなります。
さて、こうした中で「ビフォー・アフター」を拝見する機会に恵まれました。
今回は小説執筆のTIPSではなく、アドバイスを受け入れる勇気について、少し書こうと思います。
今回のご依頼と拝読の視点
20万文字ほどの作品で、同人誌発刊を予定しているとのこと。
文章力の高さは褒められるし創作歴も長い、でも読者がつかないため、どこをどう変えていけばいいのやら……といったお悩みをお持ちでした。
そこで今回は、以下の視点を持って拝読しました。
- 即売会に足を運び、本を手に取って、1ページ目に目を通し、買うかどうか決める
- 投稿サイトのタグ検索で作品をピックアップし、1ページ目に目を通し、読むかどうか決める
あえて文章力に切り込む
さすがに書き慣れていらっしゃるなと感じる作品でした。
物語の作り込みがすばらしく、こじつけ展開が一切ありません。一連の流れの中に起承転結がいくつかあって、飽きることなく読み進めました。
周囲の評価が「文章力」に集中していたため、ご自身の長所が「ストーリー構成」にあるなんて、気付きもしなかったそうです。
随所に素敵な表現も織り込まれており、文学性を感じる単語のチョイスもあって、読書家なのだろうと感じました。
完成度の高い作品、私は何をアドバイスしたかというと、評価が高い「文章」周りです。
- 主格・所有格の多さ
- 言葉の順序
- つかみ
一文単位で細かくアドバイスしているため、これ以外にもたくさんありますが、今回のお話にかかわるのは3点です。
アドバイスに対する反応に見えた「戸惑い」
前回のエントリーで、作品批判により傷付く作家がいる点にふれました。
アドバイスする側として十分注意しているものの、作家さんを傷付けていないか、やる気を削いでいないか、毎回不安でたまりません。
今回、久しぶりに「しまった……」と感じました。が、結果的には杞憂だったようです。
執筆歴が長いほど「変化」を求め「変化」をためらう
人物名や主格・所有格を多用しても間違いではありません。
ただ、それらが「それ以外の単語と単語」を遮ってしまうと、意味がつかみにくくなるリスクがあります。
言葉の順序というのは、修飾語や主語の位置についてのアドバイスでした。
これもまた、意味がつかみにくかったり、作者が意図しない意味に捉えられたりするリスクがあります。
こうしたアドバイスに対し、作家さんはこう反応しました。
「たしかにそのほうが意味がつかみやすいが、やり過ぎ、平易にしすぎる気がする」
ご自身の作品の「網の目」は今までギュッと詰まっていたわけで、その目を緩めることに不安を感じて当然です。
これは後で気付きましたが、この時点で作家さんは「緩めていない」んです。
緩めたらこうなってしまうのではないか、と想像し、戸惑っていたんです。
長年の書き方に行き詰まりを感じてはいるものの、100%納得できていないから、行動に移せない状態だったのだと思います。
書き方を決めるのは作家、読むのは読者
トラブルを避けるために「今のままで十分読みやすいです!」と濁して逃げることはできました。でも、しませんでした。
文章力に定評がある作家さんにとって、今回のアドバイスが納得し難いのは理解できます。
でも現状を変え、多くの読者に読んでもらうためには、読者視点のアドバイスに耳を傾けることも必要です。
読者が読みやすく、読者の楽しい時間を邪魔しない文章、平易でも深みのある文章。巧いからこそ、変えるならここだ!と。
数多の読者のうちの1人からのアドバイスを、作品に反映させるかどうかは自由です。
しかし、少なくとも「読みにくい」というリスクは排除したほうがいいのではないか、とお伝えしました。
- ①読みにくいと感じているのはたった1人だけ
- ②たった1人でも読みにくいと感じている人がいる
作家さんが①のお考えだったら、今後お付き合いはなくなるだろうなと思います。
でも、うれしいことに②だったんです。リピートのご予約までいただきました!
ビフォー・アフターに驚き
同人誌化するとのことで、作品の出だしについてもアドバイスしました。
すると作家さんから、改稿したので再読してほしいとのご依頼が。
※再読には別途費用がかかります。また新規ご依頼に準じるため、満枠対応中はご予約いただきます。
今まで再読の機会は少なく、章の総入れ替えや加筆といった大工事後の再読がほとんどでした。
今回はテキストエディタ「mi」の「差分表示」機能を久しぶりに使い、変更箇所を確認しました。
たったそれだけで……驚きの読みやすさ
実は再読前に、作家さんからご連絡をいただきました。「主語を削ってみたところ、文章から重さがなくなった!」と。
実際に原稿を拝読し、びっくりです。こんなに変わるものなのかと。
また言葉の順序も整ったため、一度読んだ文章を読み返すことがなくなりました。
アドバイスを作品にフィットさせる力
作家さんが、アドバイスの意図を100%理解できていなければ、作品は変わりません。
アドバイスをもとに、必要なところは残し、削れるところは削る。
今回の作家さんは、この調整がとてもお上手だったのだと思います。
客観視が作品を成長させる
文章力が高い作家さんに対して、読者は何も言ってくれません。変わるチャンスが訪れないまま、いつしか「自分の型」から抜け出せなくなります。
他人のアドバイスを受け入れると、自分だけの「型」が失われ、無個性な作品になってしまうかもしれない。そんなふうに思ってしまうのです。
でも「型」は「個性」とは限りませんし、こだわりによって読者を遠ざけている可能性もあります。
アドバイスを作品に反映しても、「その人らしさ」は消えないのだと、今回気付きました。
スキルが高い人は、「自分らしさ」を残しながらブラッシュアップする力を持っているんだなと、理解しました。
作品を冷静に、客観的に評価するのは難しいこと。忌憚なく評価してくれる友人に、まずは依頼してみてください。
「オブラートが5枚も10枚も重なっていてホンネが見えない……」
そんなときはぜひnoveRe:にご相談ください。批評・批判ではなく、改善提案やアドバイスで作品磨きをサポートします。
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