• 投稿カテゴリー:小説執筆
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小説の初稿が完成すると、推敲作業が待っています。

自分の作品を読み返し、意味が通らない個所やわかりにくい言葉、誤記を修正し、作品を磨き上げる作業です。

推敲でぜひ意識していただきたいのが、言葉の断捨離

今回は、形容詞や副詞といった「飾り」の断捨離について考えます。

文章が冗長になったり、主語が行方不明になったりする方のお役に立てるかもしれません。

プロの作家やライターが真っ先にそぎ落とす形容詞・副詞

古いタイプライター
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国語の授業に立ち返ってみましょう。形容詞・副詞とはどういった言葉を指すのでしょうか。

形容詞:事物の性質・状態・心情等を表す語。
広辞苑 第七版

形容詞は一般的に「〜い」で終わる言葉ですね。美しい、眠い、悲しい、などなど。

副詞:自立語で活用がなく,主語・述語になることのない語のうち,主として連用修飾語として用いられるもの。
大辞林4.0

副詞は他の言葉のレベルや状態を説明するために使います。日本語は大変難しいですね。「大変」が副詞にあたります。

形容詞も副詞も「読者が思い描くイメージ=筆者が伝えたいイメージ」の式を成立させるには便利な言葉です。

しかし有名作家やライターのなかには、形容詞・副詞をバッサバッサと削ぎ落としていく方がいます。なぜでしょうか。

実は他人とイメージが一致しない

岩が見える海
筆者撮影

「美しい海」という言葉を見て、どんな海を思い浮かべるでしょうか。当然美しい海ですね。

でも、私がイメージする「美しさ」と皆さんがイメージする「美しさ」は一致するでしょうか。

「猫が素早い動きで逃げた」場合、どのくらいの素早さだったのか。魔法みたいに一瞬で消えたのか、逃げていく後ろ姿が見えるくらいだったのか。

皆が知っている言葉・表現が、万人に同じ景色を見せるとは限らないのです。

※「必ずしも万人に同じ景色を見せるとは限らない」と書いて、「必ずしも」を削除したことを告白します。これも副詞です。

ホラーの巨匠も副詞を切り捨てる

水辺の牛
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「IT」や「グリーン・マイル」でおなじみのスティーヴン・キングも、余計な副詞は削っていくのだとか。

もちろん余計かどうかは作者の判断に委ねられます。形容詞や副詞を削ったせいで意味が伝わらなくなるなら残すべきですね。

文章塾を開いているライターの近藤康太郎さんは、美しい・青いといった形容詞や、これらを使った常套句(例:抜けるような青空)を禁じ手としています。

こんな言葉は削ってしまおう

にんじんの皮むき
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形容詞や副詞を削るとどうなるでしょうか。

例文を3つ用意しました。ビフォー・アフターを見てみましょう。

形容詞を削る

ススキが揺れる
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夕方六時を過ぎた薄暗い空

「薄暗い」が形容詞にあたります。これを削ると……。

夕方六時を過ぎた空

夕方六時の空の暗さは季節によって異なります。そのため「薄暗い」と書かれているほうがイメージしやすいですね。

このフレーズは小説から抜き出したもので、実はこれより前に「乾いた葉」「冬支度」といった季節を表す言葉が使われています。

つまり秋の終わりが舞台だと、読者は知っているのです。それなら「薄暗い」を削除しても問題ありませんね!

※もしも読者が「え、秋の終わりなの? 知らなかった」と言ったなら、秋の終わりの記述を見直すべきでしょう。

副詞を削る

ちょうちん
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ジャンルは特に決めていない。

「特に」が副詞にあたります。これを削ると……。

ジャンルは決めていない。

「とりわけ・別段に」の意味で使われる「特に」。このフレーズにおいては特に意味をなしませんね。特に。

ではもう1つ挙げてみます。過去一週間で、昨日の気温が最も高かったとしましょう。

昨日は特に暑かった。
昨日は暑かった。

「特に」を削っても昨日の暑さは伝わりますが、過去一週間で飛び抜けて暑かったことは伝わりません。

ですから削除すべきかどうかは即断できません。

形容詞や副詞を書かずに想像させる

本から鳩が逃げ出す
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先ほどの「薄暗い」は、それより前に季節を想像させる表現がありました。

季節を知っている読者は「夕方六時」の文字を見て、秋の終わり+夕方六時=薄暗い空をイメージするはずです。

では、季節を伝えるために「今日は秋の終わりの11月30日」と説明してしまうと、どうでしょうか。

小説の醍醐味である「想像」する楽しみを読者から奪うことになります。

まずは説明文にならないように気を付けつつ、読者に想像させましょう。作者が見せたい景色と読者のイメージが一致すれば大成功です。

秋の終わりを想像している読者に「薄暗い」という形容詞は不要。削除して文章をスッキリさせましょう。

形容詞や副詞を削ると文字数は変わる?

計算機
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とある作品の冒頭3,360文字分を読み直し、必要ない形容詞や副詞を削ってみました。

その結果なんと3,256文字で着地。たった3,000文字強の文章の中で、100文字以上の「要らない言葉」を使っていたわけです。

(曲がりなりにも、某サイトの入賞作でした)

noveRe:にお寄せいただく作品は8万〜10万字が中心ですから、単純計算で3,000文字スリム化できるかもしれません。

文字数制限がある公募作品で文字数削減に励んでいる方は、ぜひ形容詞・副詞に着目してみてください!

削る・削らないの判断は難しい……

2つの道
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形容詞や副詞を使わないと味気ないですし、伝えたいことが伝わらない可能性もあります。

「迷ったら削る」が主流のようですが、noveRe:では「迷ったら残す」をおすすめします。

形容詞や副詞を多用しても間違いではないからです。

ただ、読みやすさや伝わりやすさを優先するなら、ぜひ調整してみてください。

noveRe:の感想・校正や文章校正では、形容詞や副詞の多用についてもご提案・アドバイスしています。

文章が長くなりがちな方、冗長さが気になる方はぜひご相談ください。