• 投稿カテゴリー:小説執筆
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noveRe:利用者さんから、小説執筆にまつわる様々なお悩みの相談をお受けします。

中でも頻度が高いテーマが「情景描写」です。

    • 情景描写が説明文のようになってしまう。
    • 情景描写は必要なの?
    • 無駄な描写が多いと言われた。

情景描写を入れても入れなくても、それは作者の自由です。どれだけ文字数を割いても、どれだけ端的でも問題ありません。

もちろん表現の仕方に制約はありません。

だからこそ、難しいのでしょう。

情景描写を上手に取り入れると、作品全体に厚みが出ます。しかし使い方を間違えれば小説の世界を壊してしまうことも。

小説における情景描写の意味や使いみち、書き方のコツをご紹介します。

情景描写の本来の意味

柳の木

情景描写の簡単な例をいくつか挙げてみましょう。

    • 柳が風に揺れている。
    • 肉が焼ける匂いがする。
    • 猫の鳴き声が聞こえる。

一般的には匂いや音などの表現も情景描写に含まれます。小説を書いている方なら説明不要ですね。

このような内容を含む地の文が「情景描写」と呼ばれています。

また類似の描写として「人物描写」が挙げられます。人物描写がうまい作家として芥川龍之介が有名ですね。

人物の身なりや性格・スペックを人物描写とする方もいますし、仕草やちょっとした特徴(ほくろや眉の太さなど)を人物描写とする方もいます。

人物の説明として捉えれば人物描写であり、景色の中に溶け込んでいるのであれば情景描写に含めることもできるでしょう。

情景描写の使いみち5選!

5のポスト

情景描写は読者の頭の中に物語の世界を展開させる重要な役割を果たします。

そのため人物が置かれている状況を説明するために、章の冒頭に取り入れられることがよくあります。

実は状況説明以外でも、多くの仕事をしてくれる万能選手なのです。

小説における情景描写の代表的な使いみちを挙げてみましょう。

今置かれている状況の説明

富士山

見ている景色や居場所、周囲の動きなどを説明するために使われます。これが情景描写の基本ですね。

これらを組み合わせることで、景色と居場所を一文にまとめることもできます。

    • 居場所:室内・窓がある部屋
    • 景色:富士山

「富士山が見える」だと、人物がどこにいるのかまでは把握できません。湖畔かもしれませんし、ホテルの中かもしれません。

窓の向こうに富士山が見える」にすれば、窓がある室内にいることが伝えられます。

ほうとうの鍋から立ちのぼる湯気越しであれば、食事処にいるのかな?と想像できますね。

湯気を認識→その向こうに視線→富士山を認識、という人物の視線の動きも表現可能です。

山にかかる雲の動きや色を書けば、天気も描写できるでしょう。

時間や季節の説明

時間を表現するのには夕日や朝焼けといった空の変化がよく使われます。季節では蝉の声や梅の花など風物詩を用いる方が多い印象です。

蝉の声がまばらなら早朝か初夏、といったところでしょうか。

梅の花は開花の度合いを描写すれば、時期をある程度絞り込むことができます。

隙間を埋める

キャベツの千切り

別れ話をしている二人が黙り込んでしまった。

「どちらも声を発さないまま三分が経過した」と描写すればシンプルに伝わります。

しかしその三分間、二人がどんな様子だったのかは分かりません。

「千切りキャベツにかけたドレッシングがじわじわと浸透して行く」様子を描写すれば、時間の経過が伝わります。

それとともに、そんなところに視線を縛り付けておかなければならないほど、空気が張り詰めていることも分かります。

あるいは相手の顔が見れないくらいの後ろめたさを感じているのか。

人物に動きがない「隙間」を情景描写で埋めると、時間や感情といった「動き続けているもの」だけを描くことができるのです。

感情を投影

雷

情景描写は見えている景色を説明するだけでなく、人物の感情を投影することもできます。

太陽や晴れ、青空などはポジティブな印象を与える言葉です。雲や雨、暗い夜道などはその逆ですね。

こうした言葉を使うことで、人物の表情を描かずに感情を表現することが可能です。

またこれらの描写に動きをもたせるのもひとつの方法です。雲の隙間から太陽が出てくれば、人物の感情が明るくなったことが表現できます。

雷はマイナスのイメージがありますが、「ひらめき」と捉えればプラスのイメージです。しかし犯罪に関する「ひらめき」かもしれません。

このように複数のイメージを持つ言葉を使う場合は、読者の誤解を招かないようにうまく取り入れる必要があります。

展開を投影

情景描写を作品の最後、あるいは章の終わりに使うことで、その後の展開を想像させることができます。

人物が穏やかに微笑んでいるのに、その背後で雷鳴が轟く描写があったらどうでしょうか。

次の章が読みたくなりますし、続編が読みたくなります。

ハッピーエンドではあるけれど、このあと色々な困難が待ち受けているのだろう、という「想像の余地」を与えることもできます。

情景描写の注意点

湖と牛

表現力豊かな情景描写は、見た目の色形だけでなく緊張感や温度感、空間の広がりをリアルに感じさせる力があります。

しかし表現力に自信があっても、景色だけを描く情景描写の多用はおすすめできません。

また取り入れる場合は「誰が見た情景なのか」を意識しましょう。

情景描写には緩急をつけて

物語の見せ場においては情景描写に多くの文字数を割いても問題ありません。

事細かに表現すれば読者の想像が統一され、作者が見せたい世界に近づけることができます。

しかしどこもかしこも事細かに描写されていると……、どうでしょうか。くどい印象を与えかねません。

ドアを開けると誰もいない、という描写を例にとりましょう。

40枚ある扉を次々開けて中を確認するというストーリーなら、「部屋の中に誰もいない」ことはもはや通過点です。

これを事細かに書く必要はありませんね。

しかし「誰かがいて当たり前の部屋に誰もいない」、つまり「誰もいない」ことが物語のポイントになるのであれば力の見せ所です。

もちろん作品によっては「もぬけの殻だった」というシンプルな描写がフィットすることもあります。

作品全の見せたい部分とそうでない部分で表現に緩急をつけると、読者を飽きさせない読み応えたっぷりの作品となるでしょう。

視点を定めよう

シカゴの街

小説には一人称や三人称といった「視点」があり、どちらを選ぶかによって情景描写の範囲が異なります。

一人称の場合、語り手が見聞きしていること・感じていることが描写可能です。

三人称の場合、語り手が見聞きしていないものも描写できます。「神様視点」と表現されることがありますが、まさにその通りでしょう。

高層ビルの建設があちこちで進む大都会に描写する場合を例に取ります。

一人称では、巨大なクレーンが資材を吊り上げている様子が描写できます。各所から工事の騒音が聞こえるかもしれません。

一方三人称では、語り手に見えないところまで描写できます。

建設中のビルの鉄骨の上を器用に歩いている作業員や、資料を見ながら相談する現場監督が寒さに震える様子、県境まで開発が進んでいる光景など、小説の内容から逸脱しなければ無制限といえるでしょう。

これによって一人称では描ききれない「開発規模の大きさ」を表現することができます。

小説において一人称・三人称を混在させるのはタブーです。

しかし執筆途中で「ここは三人称で描写したかった……」と感じることがあるかもしれません。

そんなときは「伝聞」を活用してください。高層ビルの建設はこの街にとどまらず県境まで及んでいると聞いた、ですね。

小説の醍醐味「情景描写」を楽しもう!

宇宙船

同じ文章を読んでも、読者の頭の中で展開される世界は少しずつ違います。

見える世界を統一させたいのであれば、細部まで事細かに描写するといいでしょう。

読者の想像に委ねれば、読者の数だけ世界が生まれるわけです。なんだかワクワクしますね!

作品を読んでどんな世界が見えたか、読者に訊いてみるといいでしょう。

なかなか他人には頼みにくい……という方はぜひnoveRe:にご相談ください。

作品から見えた景色、感じた匂いや温度とともに感想をお伝えいたします。