小説は紙とペンがあれば執筆できますが、今ほとんどの方がデジタル環境で執筆しているのではないでしょうか。

デジタル環境で執筆する上でこだわりたいのが小説執筆ツールです。

インストール型のソフトやブラウザアプリなど多種多様な中からベストなツールを選ぶために、代表的な機能を知っておきましょう。

ご自身の執筆において必須の機能とそうでない機能を見極め、執筆の良き相棒を見つけてください。

大切なデータを守る機能

USBメモリ

noveRe:ユーザーの小説平均文字数は約10万文字。筆がのってくると、ついつい「保存」をせずに書き進めてしまうことはないでしょうか。

保存をしないと、シャットダウンやフリーズによって10万文字が一瞬にして消失することがあります。

執筆ツール選びで無視してはならない「データ保存」にまつわる機能を3つご紹介します。

自動保存機能

データを保存するという行動をせず、データを入力する度に自動的に保存してくれる機能があると安心です。

例えばオンラインのドキュメント作成ツール「Googleドキュメント」は、1文字でも入力すれば保存されますし、1文字消すだけで保存されます。

保存されても「戻る」ボタンで前の操作に戻ることもできます。


Google ドキュメント – オンラインでドキュメントを作成、編集できる無料サービス

パソコン、スマートフォン、タブレットのどこからでも新しいドキュメントを作成して、他のユーザーと同時に編集。インターネットに接続していなくても作業を継続でき、Word ファイルも編集できる、Google の無料サービスです。

Microsoft Word等オフラインソフトにも「自動保存」機能がありますが、あくまでバックアップととらえておきましょう。

都度保存ではなく、設定した保存間隔にて自動的に保存が行われます。

クラウド保存機能

クラウド=自動保存と思われがちですが、ソフトによりけりですので注意しましょう。

クラウド保存のメリットは、複数のデバイスからデータにアクセスできる点です。

PCとスマホで執筆する場合、ファイルをクラウドに置いておけばデバイスにダウンロードする必要がありません。

複数の端末にダウンロードすると、最終編集を行ったファイルがどれなのか分からなくなることがあります。

不要だと判断して削除したデータが最終編集版だった……なんてことも防げますね。

もちろん自動保存機能がないツールでは「保存」が必須です。

軽量(安定性)

シャットダウン

やはり怖いのは突然のフリーズやシャットダウン。こうしたトラブルが起きにくい軽量のツールを使うと安心です。

PCに付属しているメモ帳やプログラミングに使用するテキストエディタは、文字数が増えても軽快に動きます。

「書く」ことに特化しているため機能は少ないもののトラブルのリスクが低く、ストレス無く執筆できる点が大きなメリットです。

保存が面倒ならショートカットキーを活用しよう!

データを保存する操作が面倒な方は、ショートカットキーを活用してください。一般的には以下が割り当てられています。

  • Windows:Ctrl+S
  • Mac:⌘+S

新規で保存する場合は保存ダイアログが表示され、2回目以降の場合はショートカットキーを押すだけで上書き保存されます。

このキーを覚えておけば、キーボードから手を離さず保存できて便利です。

小説執筆に特化した機能

原稿用紙

小説の書き方は人それぞれであり、それゆえに最適なツールも異なります。

プロットを立てる方やキャラクター像を掘り下げてから執筆したい方、「見え方」を意識したい方は小説執筆特化型のツールをおすすめします。

プロット構築機能

プロット構築に特化したツールもありますが、最近の主流はプロット構築〜執筆まで一貫して行えるツールです。

物語の世界観や登場人物の特徴・関係性、起承転結を設定し、それを見ながら執筆までできてしまう高機能ツールが開発されています。

作家専用エディターツール「Nola」は有名ですね。

Nolaはブラウザで使用できるのでデバイスを選ばず同期の手間もなく、またレスポンシブデザインによりスマホでも使いやすいのが魅力です。

Nola 小説家専用エディタツール

Nolaは、作家さん専用の小説執筆ツールです。原稿の執筆だけでなく、プロットの作成・登場人物の設定など物語を書く上で必要な機能が利用できます。

アウトラインプロセッサ機能

アウトラインプロセッサ

アウトラインプロセッサは小説全体の構造を表示させることができます。

上のキャプチャはmi(ミミカキエディット)のアウトライン表示画面です。右側が執筆画面で、左側には各種情報が表示されます。

見出しの頭に特定のテキスト(上記では■□・)をつけることで見出しと判断され、左側に読み込まれます。

見出し数に制限があるWEBライティングにも活用できるツールです。

特定の場面に戻って執筆内容を確認したいとき、見出しリストの見出しをクリックすれば該当見出しまでジャンプできます。

作品に見出しをつけない方も、見出しを「しおり」感覚で設定しておくと便利ですよ。

なおmiの場合は見出し頭につけるテキストが自由に設定でき、初期設定としてMarkdownが割り当てられています。

縦書き表示機能

縦書き

電子書籍や同人誌といったアウトプットを予定している場合に便利なのが縦書き表示です。

横書きで執筆した小説を縦表示にすると、改行が多すぎたり、英単語の見栄えが悪かったり「イメージと違う」点が多々出てきます。

縦書きなら「見え方」を確認しながら執筆でき、手戻りが少なく済みます。

上のキャプチャはmi(ミミカキエディット)にて縦書き原稿用紙モードを使用したケースです。

原稿用紙指定の公募作品を執筆する際は原稿用紙表示を活用したいですね。

執筆における便利機能

ハイライト

「書く」ことに集中するために欠かせないのが便利機能です。

ほんの数秒の操作でも、積もり積もれば数時間単位のロスになります。

こうした操作が簡略化できれば、数時間単位で完成が早まるはずです。

Markdown記法使用可能

自サイトに小説を掲載する場合、見出しの設定にHTMLを使用する方が多いのではないでしょうか。

例えば「<h2>見出し</h2>」というように、見出しの前後にタグを付ける必要があります。

タグで挟むことで本文よりも文字サイズが大きくなり、見出しとして表示されるのです。

一方Markdown記法では「##見出し」と書くだけで見出しとして表示できます。

たった2文字、複数の記号を使う必要もないので執筆のスピードアップに繋がります。

Markdown記法が使える執筆ツールは、執筆完了後の出力バリエーションで選びましょう。

MarkdownファイルをHTMLに一括変換するツールを使えば、サイトへのアップも簡単です。

またPDFで出力すれば、そのまま印刷所に入稿することもできます。

ハイライト・検索機能

miのハイライト表示

とても素敵な表現を使っている作品でも、その表現が繰り返し使われていると非常にもったいない!

特に変わった読み方をする熟語や漢字は記憶に残りやすく、それゆえに「またか」という印象を与えてしまいます。

特定のテキストを選択すると、それと同じテキストに色を付けて表示してくれるのがハイライト機能です。

上のキャプチャはmi(ミミカキエディット)で「私」をハイライト表示しています。

人物名を連呼したり、同じ表現や同じ文末が連続させるクセがある方の強い味方になるでしょう。

このエディタでは「検索」機能を使っても同じようにハイライトがつきます。

しかし選択ハイライトは、検索窓に単語をコピペするひと手間が不要なのです。

アウトプットに必要な機能

印刷

サイト掲載や電子書籍化、紙媒体への印刷など小説のアウトプット形態はバリエーションが豊富です。

ご自身が望むアウトプットにはどういった機能が必要なのか見極めて、ツールを選ぶとよいでしょう。

校正機能

小説の「ここぞ」という場面を狙って発生する誤字脱字。ついつい書いてしまう「ら抜き言葉」。

修正のためにカット&ペーストを繰り返していたら、文字が重複していた……なんてことも。

こんなとき強い味方になってくれるのが、校正機能付きの執筆ツールです。

知名度No.1なのはMicrosoft Wordでしょうか。機能面で他の追随を許さないのはJustsystemsの一太郎ですね。

単純な検索機能だけでは網羅できない表記ゆれのチェック機能は素晴らしいのひと言です。

校正機能付きのツールは有償のものが多く、無料で済ませたい場合は文書校正サイトを利用すると便利でしょう。

日本語ワープロソフト 一太郎2021 | ジャストシステム

「一太郎2021 プラチナ」は、一太郎2021、ATOK for Windows 一太郎2021 Limitedに加え、高品質フォントや辞典、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトなどを搭載。。一太郎とATOKに機能を絞ったベーシックな文書環境の「一太郎2021」単体製品もご用意しています。

文字装飾機能

ここでいう「装飾」とはルビや傍点などを指し、ワープロソフトに類するツールのほとんどが装飾機能を有しています。

書籍原稿や公募原稿執筆で文字装飾を使う方は、この機能があると助かりますね。

一方でWEB掲載のみの方や文字装飾をほとんど使わない方は、この機能を優先する必要はありません。

小説投稿サイトでは文字装飾ができなかったり、独自タグを使う必要があったりします。

レイアウト機能

Word段組み

書籍原稿を入稿する際はレイアウトができるツールを持っておくことをおすすめします。

中にはテキストデータのみ入稿すればレイアウトをしてくれる印刷所もありますが、自由度は下がります。

例えば禁則処理の仕方にこだわりがある方は、予期せぬレイアウトになってしまうことも。

ワープロソフトの他、執筆に特化したフリーのテキストエディタ「TATEditor」が有名です。

TATEditor

EPUB出力機能

電子書籍の執筆がメインなら、ぜひEPUB出力ができるツールをお使いください。

EPUBは電子書籍の国際規格で、多くの電子書籍リーダーがEPUB読み込みを採用しています。

PDF出力機能

PDFはフォントの「埋め込み」が正確にできていれば、どのOSで開いても見た目が変わりません。

印刷所の入稿の王道といってよいでしょう。

執筆〜レイアウト〜PDF化まで1つのツールで完結できるツールが便利です。

汎用性が高いファイル形式で執筆を始めよう

電子書籍

文章のファイル形式として汎用性が高いのはテキスト形式(.txt)です。

使用するツールが独自の保存形式を採用している場合、テキスト形式でも出力できるか必ず確認しましょう。

テキスト形式のファイルなら大抵のツールで編集可能です。

ツールを変えたらファイルが開かない!なんてことが防げます。