あなたはどのような小説に魅力を感じますか?
ストーリーがおもしろい。世界観やキャラクターの設定がユニーク。情景描写が美しい。
人それぞれ魅力を感じるポイントは異なりますが、おそらく「表現の豊かさ」「表現力の高さ」は、多くの読者を引きつけるポイントではないでしょうか。
今回は小説を魅力的にする要素のひとつ、「表現」について考えていきます。
多くの作家さんが悩む「表現力」
小説を書いていて、このように感じたことはありませんか?
- ありきたりな表現ばかり並べてしまう
- ありきたりだと気付いても別の表現が思いつかない
- もっといい表現がありそうなのに言葉が思い浮かばない
これらの問題に直面したとき、「自分には表現力がないのだ」と肩を落としてしまう作家さんが多いようです。
しかし表現力は後天的な能力。今から鍛えることができますし、遅すぎることはありません。
では「表現力が高い」とはどのような状態を指すのでしょうか。
この問いに対する答えを、「表現力=語彙力」だと考える人もいるでしょう。
たしかにたくさんの言葉を知っていると、幅広い表現ができそうですね。
ただしここで勘違いしがちなポイントがひとつ。語彙力の高さが表現力の高さに直結するわけではありません。
語彙力=表現力ではない
語彙が豊富な作家さんはたくさんの言葉を知っています。言葉を知らない人よりも多くの情報を、作品の中に詰め込めるでしょう。
では、詰め込まれた情報・言葉が「難しい言葉」ばかりだった場合、はたしてその作品は魅力的でしょうか? 楽しめるでしょうか?
難読漢字や難しい表現は、限られた相手にしか伝わりません。
おそらく多くの読者が、「言葉が難しすぎて作品を楽しめない」と感じるはずです。
小説における表現力の高め方
語彙力だけを鍛えても、表現力アップにつながるとは限りません。
そもそも、多くの作家さんが悩む「表現力」は何を指すのでしょうか。
- 多くの読者に伝わる表現をする力
- オリジナリティあふれる表現をする力
今回は小説における表現力をこのように定義し、表現力を鍛えるために何をすべきか、2つポイントに絞って考えていきます。
- 語彙を増やす
- 発想力を鍛える
語彙を増やす
語彙力の高さと表現力の高さはイコールにならない、といいました。
だからといって、語彙力は高いに越したことはありません。そもそも言葉を知らなければ表現の幅は広げられないからです。
- 新聞やニュースから語彙を増やす
- 類語辞典から学ぶ
表現力を鍛えるために、少しずつ語彙を増やしていきましょう。
新聞やニュースから語彙を増やす
何から始めればいいかわからない、という作家さんにおすすめ! いますぐ始められる手軽な方法です。
新聞やニュースは、比較的難しい言葉で表現される傾向にあります。
だからこそ知らない言葉、難しい言葉を覚えるにはぴったり!
新聞やニュースに出てきた知らない言葉を調べ、覚えていくことで、自然と語彙が増えていきます。
類語辞典から学ぶ
「いつも表現がワンパターンで他の言葉が出てこない」という悩みを抱えている作家さんは、類語辞典を使うのがおすすめ。
ひとつの言葉に対する同義語を検索できるので、語彙力を鍛えることにも役立ちます。
発想力を鍛える
次は「身につけた語彙を使って表現するスキルの高め方」を探っていきましょう。
表現力の高さは、「知っている言葉をどれだけ使いこなせるか」によって左右されます。
料理にたとえると、語彙は調理に必要な食材や調味料・調理器具です。
どんなにおいしい食材、どんなに高級な調理器具を買い集めても、食材の切り方や味付けの仕方、調理器具の使い方を知らなければ、美味しい料理はできませんよね。
表現力を鍛えることは、集めた食材を美味しく調理するスキルを身につけることなのです。
しかし、誰か考えたレシピを真似ているだけで良い作品は生まれません。そこで必要になるのが発想力です。
- 他の小説から学ぶ
レシピを調べてメモする - 他の小説を分析する
なぜこの調味料なのか、なぜこの切り方なのか……等
⇒手に入れた食材を自分らしい調理法で調理する力=発想力が身につく!
他の小説から学ぼう〜情報収集〜
今回おすすめしたいのが、「好きな小説の中から優れたフレーズを書き出す」という方法です。目的は「情報収集」と捉えてください。
ここではやり方を3パターンご紹介します。
- 丸々書き写す
- 気になった表現を抜き出して書く
- 特定の表現を抜き出して書く
- 作者の意図が気になったフレーズ
なぜ作者はここでこのような表現をしたのだろう - 登場人物の心情が気になったフレーズ
なぜ主人公はここでこのように言ったのだろう - 単純に好きなフレーズ、美しい・秀逸だと感じたフレーズ など
すべての方法に共通しているのは、「紙に書き出す」こと。
時間や労力がかかる方法をわざわざおすすめするのには、もちろん理由があります。
- 小説とじっくり向き合うため
- 表現を分析するため
ひとつは、小説とじっくり向き合えるから。
文字を目で追うだけでも小説の内容は頭に入ってきますが、記憶に残らない情報も少なからずあるでしょう。
一方、「書き出す」ことを意識すると自ずと注意深くなり、普段気に留めることのない表現に出合うきっかけにもなります。
もうひとつの理由は、表現を分析するため。
気になるフレーズを暗記することが目的なら、わざわざメモをとる必要はありません。音読・黙読だけで十分でしょう。
フレーズを抜き出す目的は「情報収集」ですから、集めた情報を後で活用するためにも「紙に書き出すこと」は欠かせないのです。
他の小説を分析する〜表現の素晴らしさを自分の糧に!〜
集めたフレーズはただストックしておくだけでなく、じっくり分析してみましょう。
- なぜこの表現が素敵だと思ったのだろう
- なぜこの比喩表現はわかりやすいのだろう
- なぜこの描写はこんなに美しいのだろう
自分の琴線に触れたのはなぜなのか、理由や根拠を明らかにしてください。
細かく分析すると、自身が「良い」と感じる表現の傾向が見えてきます。それが自分なりの表現=発想を引き寄せる材料になります。
分析するときはぜひ、メモにたくさん書き込みをしてください。
手書きは思考整理をスムーズにしてくれるだけでなく、記録としても大いに役立ちます。
フレーズの分析結果はもちろん、分析の過程にもヒントが隠れているかもしれません。
だからこそメモは必須! ここで作成したメモは、自分だけのネタ帳になります。
あとから見返せるように、ノートやメモ帳にきちんと残すことをおすすめします。紙の切れ端に書いた場合は、1冊のノートに貼り付けていくといいでしょう。
書き出すのはあくまでも勉強のため
小説の表現を抜き出すのは、あくまでも「表現の勉強をするため」、そして「発想力を鍛えるため」です。
決して表現を真似するためではありません。
抜き出した表現を自分の小説にそのまま登場させるのではなく、学んだこと、分析して自分の中に取り込んだものを反映させた、オリジナルの表現を見つけてくださいね。
書き出しメモを画像化してネット上にアップロードしたり、書き出した内容をブログやSNSで公開するのは著作権の侵害にあたる可能性があります。
宝物として、お手元で大切に保管してくださいね。
表現は難しい!だからこそおもしろい!
同じ感情でも、同じ風景でも、作家さんごとに表現は異なります。
自分なりの表現を見つけるには、日々の積み重ねが欠かせません。
もし表現力のことで悩んでいるなら、ぜひ今回ご紹介した方法を試してみてください。
Writer:マスダ キミ / Editor:noveRe: