同人誌即売会として真っ先に名前が上がるのは「コミケ」でしょうか。
正式名称は「コミックマーケット」で、有限会社コミケットが開催するイベントです。
これに匹敵する規模を持つのが、赤ブーブー通信社の「スパコミ(SUPER COMIC CITY)」。
同社は「スパーク(COMIC CITY SPARK)」や「(春コミ)HARU COMIC CITY」など中規模イベントを年に複数回開催しています。
さて、これらのイベントに共通している「言葉」にご注目ください。
「コミック」です。
漫画(まんが、英語: comic(コミック)/複数形:英語: comics(コミックス)、cartoon、manga)は、狭い定義では笑いを企図した絵をいい、「戯画(カリカチュア)」の概念と近い。広い定義では、必ずしも笑いを目的としない「劇画」「ストーリー漫画」「落書き」「アニメ」なども含み、幅広い意味を持つ。
引用元https://ja.wikipedia.org/wiki/漫画
コミックは主に「絵」を用いたエンタメ作品を指すようですね。
実際に即売会に行ってみると、漫画を頒布するサークルが占める割合は非常に高く、「小説を手に取る人がいない」という声は即売会あるあるです。
だったら……、小説が主役の即売会に参加してみてはいかがでしょうか。
今回は小説作品が主役になれる同人誌即売会をご紹介します!
※執筆時点の情報であり、開催予定の変更やイベントの廃止などの可能性がございます。
会場出展型即売会
まずは会場頒布型の即売会です。イベントの規模は様々で、大きなものだと広いホールを使って行われます。
小規模のものではビルのワンフロアや広めの会議室、フリースペースで開催されることもあります。
文学フリマ
今や文芸系即売会の代表格となった文学フリマは、2002年に第1回が行われました。
会場は青山ブックセンター、出店数は80という小規模なイベントにもかかわらず来場者数は1,000人に達し、皆が待ち望んでいたイベントだったといえるでしょう。
注)文学フリマでは「出展」「サークル参加」ではなく「出店」と表記します。
現在は東京流通センターに場所を移し、出店数は1,000を突破する年も。
開催都市が複数あるのが文学フリマの特徴です。執筆時点北は札幌、南は福岡まで9都市で開催されています(執筆時点・スピンオフを含めると10都市)。
文芸イベントとしての知名度が高く、プロや著名人が参加することでも知られています。
「文芸・文学」であればどんな作品を持ち込んでもOKです。この線引をするのは作家本人。ですから漫画であっても自身が文学だと思ったら出店できます。
なお禁止事項として「第三者の知的財産権を侵害するもの」が挙げられているため、二次創作はNGです。
一般的な小説だけでなく、「マニアック」「ニッチ」という言葉がピッタリの作品が豊富なのも文学フリマのポイントです。
出店サイドではなく購買側として参加してみると、新たな発見が生まれるかもしれません。
近年は小説投稿サイト「E★エブリスタ」とタッグを組んだ立ち読みカタログが作られ、出店作品の試し読みができるようになりました。
出店料は会場規模により異なりますので、出店したい都市ごとの開催情報を必ずご確認ください。
文学フリマ | 小説・評論・詩歌 etc.の同人/商業作品展示即売イベント
文学フリマは「自らが<文学>と信じるもの」を自由に販売するフリーマーケット形式のイベントです。小説・評論・俳句・ノンフィクションなど様々なカテゴリの作者が集います。プロ・アマ問わず。同人誌・商業誌、個人・出版社・文芸サークル・短歌会・句会・同人など。全国8都市・年9回開催。
Text-Revolutions
浅草(東京都)で開催されている文芸イベント「Text-Revolutions(テキレボ)」は比較的歴史が浅く、第1回は2015年、川崎産業振興会館にて行われました。
文学フリマに比べると規模は小さく、近年は参加上限が300ブースとなっています。
このイベントの特徴は何といっても「温かみ」。サークル・一般問わず参加者の気持ちに寄り添う取り組みが随所に見られます。
まずはビギナー割引です。
サークル参加費用はイベントの規模が大きくなるほど高くなる傾向で、例えばコミックマーケットでは参加料8,000円とシステム利用料1,100円がかかります。
テキレボはこの半額ほど。とはいえ製本代や会場への交通費などを含めるとばかにならない金額です。
初参加ともなれば、この金額を支払ってイベントを楽しめなかったらどうしよう……、なんて不安に感じる方もいるでしょう。
テキレボのビギナー割引は、即売会参加が初めてのサークルや活動歴1年以下のサークルの参加料を割引する制度です。
優先度が高い順に20サークル限定ではありますが、2019年開催を例に取ると通常参加が4,500円、ビギナー割引だと3,100円、1,000円以上の割引が受けられました。
2つ目はお買い物チケットです。イベントの当日に本部で購入できるもので、100円×11枚綴りのチケットが1,000円で購入できます。
当日小銭を用意し忘れた一般参加者は、このチケットを利用してはいかがでしょうか。
3つ目がお買い物代行。会場に行けない方の代わりに本を購入してくれるサービスです。手数料がかかること、必ず購入できるとは限らないことを了承した上で上手に活用してください。
4つ目が同人誌感想投稿です。テキレボの公式サイトのフォームから、同人誌の感想が投稿できます(二次創作はNG)。
本の感想を伝えるのは勇気がいるもの。こうしたコンテンツがあると読者は嬉しいですね。また作家側は感想一覧からご自身の作品を探す楽しみも生まれます。
なかなか感想がもらえない……。そんなお悩みをお持ちの方はぜひ、こちらの記事をご参考に!
アットホームな企画や取り組みが盛り沢山のテキレボは、ビギナーさんにおすすめの同人誌即売会です。なお二次創作の頒布も可能です。
本の杜
すでに18回を数えた本の杜。初回は2011年に川崎産業振興会館で行われました。参加サークルは40〜50ほどの小さなイベントです。
小さなイベントとはいえ文芸同人サークルの中で知名度は高く、しまや出版や栄光をはじめとする複数の印刷所がバックアップしています。
同人誌即売会では本部に「見本誌」を提出するのが一般的です。本の杜では過去の見本誌まで全て閲覧することができます。
また大規模イベントでは休憩スペースがなく、歩き疲れた一般参加者が通路に座り込む姿がよく見られますが、本の杜では休憩スペースが設けられています。
過去にはお茶やコーヒーのフリーサービスもありましたが、コロナ禍以降の継続は厳しいかもしれませんね。それでも休憩スペースがあるイベントは非常に貴重です。
ちなみに2018年本の杜13のサークル参加費は1スペース3,700円でした。
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開催地限定即売会
ほとんどの同人誌即売会が東京メインで開催されていますが、実は開催地限定の即売会もあるんです。
代表的な2つのイベントをご紹介します。
静岡文学マルシェ
小さなカフェで始まった静岡文学マルシェは2016年から1年に1回の頻度で開催を続けていましたが、第4回はコロナ禍で中止となりました。
各イベントがオンライン開催に移行する中、静岡文学マルシェは他とはちょっと違う方法でイベントをおこなっています。
貸し本棚を設けている書/雑貨店の棚ひとつ分を借りて、短期間の常設型イベントを開催しているんです。
棚ひとつで3サークル、1ヶ月交代で1年間。通常の即売会のようにリアルタイムの交流はありませんが、本を手にとってもらう、興味を持ってもらうことはできます。
イベント開催が難しい今、主催者が掲げるコンセプト「静岡で作品発表」「地域の創作者のつながり」「文学の楽しさ共有」を崩さず、サークルの創作意欲も持続できる。
同人誌展示の新しい一歩を踏み出した静岡文学マルシェ、今後が楽しみですね。
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尼崎文学だらけ
兵庫県尼崎市「尼崎文学だらけ」は即売会と詩の朗読をライブで楽しめるイベントとして開催されました。
会場は近松記念館。東洋のシェークスピアと評される近松門左衛門の文机や過去帳などが展示されています。ここの和室を借り切って行われ、ブースとしては33ありました。
小さな会場だからこそ、人が集まれば密になりやすいもの。そこで尼崎文学だらけはWEB開催に移行しました。その名も「あまぶん」。
ただ単にオンラインに移行しただけではありません。オンラインならではの面白い企画が沢山あります。
投稿サイトのURLを使った文芸リスト「リスリス」や、あまぶんの作品レビューを募集して主催者がトークをする「アマビブ」、ショートショート企画「444書」などなど。
イベントの収益は尼崎の養護施設に寄付する予定です。本を読む喜びが子どもたちの成長につながるように、という主宰者の思いが込められています。
オンライン同人誌即売会も多種多様に
一時的にオンラインに移行する即売会がある中で、オンラインをベースにした同人誌即売会も増えつつあります。
小説メインの即売会ではありませんが、オンラインの良さを生かした取り組みを2つご紹介します。
pictSQUARE
オンライン即売会サービス「pictSQUARE」は即売会ではなく「即売会サービス」です。
即売会を主催するのは運営会社ではなくユーザー自身。会場の規模はオフライン同様スペース数で選び、参加リストやスペース配置は自動・手動が選択できます。
個人主催のプチオンリーイベントをイメージすると分かりやすいですね。小説だけの即売会もあります。
主催にかかる費用は参加サークル数×550円(or サークル参加料の30%の高い方)。サークル参加料は主催者が決定します。
サークル側は自家通販サービスpictSPACEを使うか、他サイトの通販ページを連携させればOK。かなり自由度が高いシステムです。
直接のコミュニケーションはできませんが、アバターを使ってオンラインで交流することができます。
何となくイメージしにくい……と感じる方は公式サイトの「デモ会場」にアクセスしてみてください!
pictSQUAREでは、オンラインで即売会に参加できます。オンライン会場では、アバターでチャットでき、その場で頒布物を注文することができます。
NEOKET
オンライン即売会でありながらリアルさを追求したのがpixiv主催のNEOKETです。
アバターを使うのはpictSQUAREと同様ですが、NEOKETは3Dアバターを使い、会場はVR空間。VRのヘッドセットがなくてもPCだけで参加できました。
これまでVR空間の即売会としてVketが開催されていますが、同人誌即売会はNEOKETが初ではないでしょうか。
サークルスペースではサークル参加者と一般参加者が音声で対話でき、見本誌をクリックすれば閲覧できるというリアルさ。待機列に並ぶアバターの様子は、即売会そのものです。
残念ながらスマートフォンでの参加はできません。またPCのスペックが低いと動きがカクついて楽しめません。デジタル機器にある程度慣れていなければ参加は難しいでしょう。
以前に比べればVRは身近な技術になりましたが、生活の中に浸透しているとはいえない状況です。今後普及が進んでいけば、幅広い層がVRイベントに参加できるようになっていくのではないでしょうか。
ピクシブ主催のバーチャル空間で行われる同人誌即売会「NEOKET(ネオケット)」2021年1月30日開催決定!
同人誌即売会に参加するチャンス!
同人誌即売会は東京開催が当たり前で地方在住だと参加できない、というのは過去の話。今では様々な地域、そしてオンラインでも開催されています。
書き手にとっての選択肢が増えれば、読み手の選択肢も増える。つまり多くの方に作品を読んでもらうチャンスが増えたわけです。
初めての即売会参加に迷っている方、コロナ禍で活動を自粛していた方、あなたの作品を沢山の読者が待っています。